デビュー間もなく、担当編集者に言われました。以下言葉はそのままです。 「見開き2ページに王子様が出てきて、ヒロインが王子様と結ばれる話を年間200ページ描け、それが嫌なら今すぐやめろ。」
ファンタジー系やホラーならまた違うと思いますが、メジャーの少女漫画ではそうでした。担当編集者による違いもありますが、最初はラブコメで確実にアンケートを取るのが常道です。人気が出ると、自分の温めていた得意なネタを出して幅を広げます。独特の作風で知られるベテランも、最初はラブコメで、初期作品集を見て意外に思うことがあります。昔から、少女漫画は最初はラブコメです。苦手と言っていられません。
年間200ページは、それだけ描ければ認められるという目標です。32ページの読切りを隔月で描くと192ページです。40ページの読切り5本で200ページになります。これは、新人から見れば上出来、充分と言っていい仕事量です。コンスタントに描いている漫画家と名乗れます。ただし当時の原稿料は5000円(大手でも3500円の雑誌もありました)ですから、200ページ描いても100万円です。当時そこでは、1年で1000円、2年でまた1000円上がり、7000円までは誰でも原稿料が上がりました。それ以降はヒットがあれば上がりますがなければ据え置きです。2年以内に連載を取ってヒットを出さないと生活費を稼げません。7000円で月刊誌で連載しても、32ページでは2688000円です。ここから必要経費が出ますから連載作家でも生活は厳しいと思います。コミックスが出ても印税は10%です。単価500円として初版1万部で印税は50万です。増刷にならなければ原稿料1本分程度のボーナスです。売れないと次のコミックスは出ません。2巻以降が出ないということもよくあります。どこまでも試練が続きます。
それでも、そこまで行ければ他に売り込みもやりやすいので、当面の目標はまず連載です。しかし私の場合は、1年過ぎてやっとアンケート3位、それで次の掲載予定はないと言われ、数か月後の会議で通れば掲載するということでした。次の会議で通りましたが、到底生活できませんし、奨学金の返済も抱えていました。3位で次がないと言われた時点でダメだと自分なりに判断し、そこのネーム、他への持ち込み、カットの持ち込み、バイト、パソコン・ワープロスクール通い、漫画と両立できる短時間勤務の職探しを併行してやりました。そして同じ会社で仕事をつなぎながら、9時5時の事務職と兼業することにしました。漫画だけを見ると順調に行かなかったわけですが、それでも今思うと努力しました。